マツイの育て方（美山和也著）

また　特筆しておきたい軟式野球の組織もある。リトル・ボーイズのような先に統括組織があって、加盟チームを拡大していった野球団体は数多いが、千葉県の｢京葉少年野球連盟｣は後から総括組織を編成した団体である。
昭和50年の後半、千葉市では稲毛海岸の埋め立て事業と同時に、団地、高層マンションの建設ラッシュが始まっていた。急速な都市計画によって、町の光景が瞬く間に変貌を遂げたで時代である。だが、後の人口増加に備えた学校用地として、千葉市が所有していた空き地がまだ残されていた。大人の背丈も飲み込んでしまうほどの葦が生い繁った沼地ではあったが、同地の管理を任されていた加藤正三氏（運送業）はその広さを惜しんだ。約一万平方メートルの沼地を自費で整地し、四面の野球場を完成させ、近隣の少年野球チームに無償開放したのである。この評判を聞きつけ、近隣の少年野球チーム、あるいは人口急増によって新設されたチームも集まってきた。昭和50年秋、千葉市の3チームと東京・江戸川区のチームで親善試合が行われ、京葉少年野球連盟の礎となった。同連盟の役員には、少年野球チームの指導者のかけもちも多い。四面球場は四半世紀の流れで光景を変え、先達の加藤氏も逝かれたが、同連盟は50余チームを数える千葉県有数の少年野球組織へと成長した。手作りの温もりを残す一方で、主催大会及び行事は全国の硬式野球組織に勝るとも劣らないものがある。年度の主な大会は春季大会・夏休みには毎日新聞社主催（くりくり少年野球連合会）の｢くりくり少年野球選手権大会｣、10月から｢加藤正三旗争奪秋季大会｣、2月には卒部記念大会、5月から9月までは四年生以下の｢教育リーグ｣（総当り戦）も行われている。また、1月には審判講習会も開かれている。｢夏季大会も設けていた時期もありましたが、日程的な問題、また　他の主催大会に出場するチームもありますので、現在はおこなっておりません。｣事務局長の清水隆氏はそう言う。しかし、夏季大会の休止は後退的な意味合いはなく、同連盟の親睦の深さを表している。
京葉少年野球連盟の加盟チームは、地元の千葉市以外にも習志野市・八千代市・佐倉市・四街道市・白井市・酒々井町にも広がっている。｢関東団地野球連盟｣など他組織チームの加盟も認めており、市町村に線引きされない横断的な組織でもある。市井の軟式少年野球チームはその市町村が主催する野球大会には出場するが、その行政組織や地元有力者の顔色を窺がって、他地域の野球チームとの交流を避けているところも少なくなかった。
｢明日を担う青少年の健全な育成と少年野球の原点を見据える｣同連盟の理念である。少年野球の原点　＝　大人の都合に左右されない野球大会が開催されている。　【平成16年5月　パジリコ株式会社より出版】　提供：美山和也氏：パジリコ株式会社

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